『日本の医療機器の真実』(南和友)
市営の図書館でなんとなく手に取ったのですが、予想以上に勉強になる本だったので紹介したいと思います。私も医学部の学生であり、数年後には現場で働くことになるため、医療制度や医療現場での問題などには、やはり興味があります。
「 医療崩壊」という言葉が使われるようになってもう随分経ちます。医療が崩壊するということは、本来、危機的状況のはずですが、あまりに長期間使用され続けたため、危機意識が希薄化されてきているようにさえ思われます。しかし、本書を読むと、やはり危機的状態なのだと再認識できるはずです。本書では欧米先進国と比較して日本の医療をとらえており、日本がいかに諸外国と比べて効率の悪いシステムになっているかがよくわかります。
また、「医療崩壊」という言葉の認識には、医療従事者と患者側とでズレがあるかもしれません。医療従事者以外の一般の人は日本の医療に対して、どういうイメージを持っているのでしょうか?
崩壊、崩壊といっても、今は病院に行けば一応診療はしてもらえるわけで、患者側としては、待ち時間が長いなどの不満はあるにしても崩壊はしないだろうと思ってしまっても無理はありません。また、日本は世界でも最高レベルの医療をほこっていると言う人さえいる現状では、「医療崩壊」といわれても実感がわかないのも当然でしょう。
ヒラリー・クリントンさんがアメリカにも皆保険を導入することを考え、日本に視察に来た際に、日本の医療現場をみて、「聖職者さながらの自己犠牲だ」、「アメリカにはとても無理だ」、というようなことを言ったというのは有名な話です。
日本人にとっては当たり前に思えることでも外国の人からみたら信じられない、ということはよくあります。それを聞いて初めて、自分達は特殊だったのかと知るわけです。これは医療に限らず様々な分野で同じですよね。
この本のなかでもドイツとの比較がよく出てきます。対談の中心になっている南和友さんという約30年ドイツで医師として勤務した経験を持っているためです。ドイツと比較すると日本にも改善しなければいけない問題が山積していることがよくわかります。また、現状が普通であり、特に問題ないという認識が誤ったものであることも、他国と比較することでよくわかるでしょう。
本書は非常にオススメであるのはもちろんですが、自分にとっても読んでそのままにしておくにはもったいない本です。そのため、この本に関わるブログ記事は、本書の紹介という意味だけでなく、備忘録的な、自分のために書くという性質をもったものです。
ということで、数回にわけて個人的に気になる箇所に関して記事を書いていきたいと思います。