バカに進化した人類

脳神経外科医からリハビリテーション科医に転科して脳研究者を目指す医者のブログです。

小さな子供をもつ親が観るべき映画ナンバーワンは宮崎駿の「となりのトトロ」

 好きな映画を聞かれてジブリ作品を答える人は多いと思います。つい最近も「思い出のマーニー」がテレビ放送され、その前は「ハウルの動く城」がやっていましたね。定期的にジブリ作品は金曜ロードショーなどで放送されいます。

 好みは人それぞれあるかもしれませんが、個人的には、トトロ、もののけ姫ラピュタあたりが大好きです。なかでもトトロは少し語りたくなってしまうくらい好きです。面白いだけでなく、僕の価値観にまで影響を与えた作品と言ってもよいくらいですので少し書いてみたいと思います。話として面白くなるように、子育てと絡めてみるという方法をとってみました。

 

 タイトルのとおり、僕は小さな子供がいる親が観るべき映画ナンバーワンは「となりのトトロ」だと思っています。

 別に子育てのために観なくても単純に面白い映画ですが、子育てという視点を頭の片隅に置いて観ても、考えさせられる良い映画だと思います。なんにせよ、子育ては本当に大変だと思いますが、トトロを観ると少しは心が洗われる気分になるのではないでしょうか。

 

 ご存知の通り、「となりのトトロ」では、子供たちがとても活き活きと描かれていて、ああ子供ってこうだよな、自分も子供の頃はこうだったなと思うシーンがたくさんありますよね。そういう場面を見ると、僕は子供の感性の豊かさや、それゆえの子供時代のかけがえのなさを感じます。自分も大人になることで失ってしまったものがあったと気づきます。そしてその失ってしまったものは、森の守り神であるトトロ同様に大切なものであったと感じて切ない気持ちになります。同時に、トトロがいたと思える自分の子供時代に対する感謝の念を抱き、切なさと両親や地域への感謝が入り交じって涙が出ます。子供時代って本当にかけがえのない、人生で一度きりの時期だなと実感できるのです。

 

 大人の大切な役割として子供達にそのような子供時代を送らせてあげることではないでしょうか。簡単に言い換えると、子供は子供らしくすごすということです。「将来」のためといって受験勉強などの「教育」をすることは、子供時代を大人になるための準備期間として捉え、将来があるから子供は大切なのだと考えることです。それでは将来があまりない高齢者は大切ではないということになってしまいますが、そんなことはないでしょう。高齢の方もコミュニティを構成する大切なメンバーです。

 

 この場合の「将来」は社会の一員となって働く時期のことを指していると言っていいでしょう。すなわち、いい職業について裕福になることだと思います。

 確かに大切なことですが、経済的な豊かさだけをものさしとするのは、人生観としては浅いと言わざるをえません。

 

 僕は、子供であることを、すなわち子供時代を、将来とは無関係に大切な時期として評価してあげることが大切ではないかと思います。人生では二度と送ることができない大切な時期です。子供の感性は大人になっては、もう戻ってはきません。

 

 例えば、僕は虫が大嫌いです。でも子供の頃は逆に大好きで、カブトムシを幼虫から育てたりしてました。あのデカイ芋虫みたいなやつです。夏になると、父親と一緒に夜中に近所の森にカブトムシを取りに行ったことはいい思い出です。虫が嫌いになってしまった今でも、虫を育てたり、父親と取りに行ったことは楽しい思い出であり、いい経験だったと思います。

 虫取りをあんなに楽しめたのは子供だったからです。靴が汚れることを気にせず、土の上を歩く感覚を楽しめたのは子供だったからです。

 

 あの頃の森は幸いまだあるみたいです。もし、あの森を伐採して娯楽施設を作るという話が持ち上がった場合、僕はもちろん反対します。自分にとっては思い出の場所ですし、今の子供達にも同じような楽しく貴重な経験をしてもらいたいと思うからです。しかし、虫取りなどの経験のない大人にとっては、「娯楽施設できるのか、いいねえ」と思うかもしれません。このように子供時代の過ごし方で、大人にってからの考え方までも気づかないうちに違ってくるのです。

 

となりのトトロ」では、トトロという生き物は大人には見えないけど、子供にだけ見える森の守り神のような存在として描かれています。僕にはこのトトロという生き物は、子供の頃には持っていたけど、大人になるにつれて失ってしまったものの象徴のように感じます。

 そのトトロは大人には見えないけれど、森の守り神として、大人達には気づかないところで大人も含めたみんなの生活を支えているのです。ただ見えなくなってしまっただけで、いつもすぐそばにいるのです。

 

 それと同じで子供時代の経験は、大人になれば忘れてしまったり、「ああ楽しかったなあ」くらいのものになってしまったかもしれないけれど、自分の深いところに影響を与えていて、人生の豊かさの大切な要素としていつまでも残るのではないかと思います。トトロが子供だけでなく大人やおじいちゃんおばあちゃん、他の動物など、すべての生き物が住む森を守ってくれているように。